液晶テレビ LDC-TV、有機ELテレビ OLED-TV、何が違うの、どっちがいいの?

有機ELテレビ とても綺麗です! 選択時の留意点について


有機ELテレビ


地上波デジタル放送になってフルハイビジョン(FHD)2Kテレビも一般家庭に普及し、4K高精細テレビの導入も進みつつあります。



4K TVでも液晶テレビの他、有機ELテレビのラインアップも充実してきました。



次のテレビの購入を検討している人のため、液晶と有機ELテレビの特徴をご紹介したいと思います。



細かい話はさておいて、選択肢の考慮点を早く知りたい人は、2.液晶および有機ELテレビの表示と選択時の留意点まで読み飛ばしてください。



ここでの話の理解を助けるため、最初に液晶と有機ELの表示デバイスとしての基礎を簡単に紹介します。




1.液晶テレビと有機ELテレビの基礎


1)呼称


液晶テレビ LCD-TV ;  Liquid Crystal Display - TV


有機ELテレビ OLED-TV ; Organic LED - TV ; Organic Light Emmiting Diode - TV


有機ELテレビは、そのまま訳すと Organic ElectroLuminescence TV ; OEL-TVなのですが、業界内では発光原理がLEDと同じということで有機LED (OLED) TVと言う表現が一般的に使われています。




2)LCDの基礎


すでにみなさんご存知のようにLCD つまり液晶ディスプレイは、液晶を表示デバイスとして利用しています。


液晶そのものは光りません



液晶は、バックライトの光の通過量(透過光量)を変化させるものです。



そのため、透過型のプロジェクター等で使われる場合は、ライトバルブというような表現も用いられます。


まずは上記の下線部を頭に入れておいていただけると十分ですが、もう少し詳しい話をすると、


液晶デバイスは、液晶を挟んで電極と偏光板が配置されています。



電極間の電圧を変化させることによって液晶の配列(配向)状態がかわります。



その配向状態と液晶内の通過距離によって通過する光の性質(偏光状態)が変化します。



液晶出力部での偏光状態と、出力側の偏光板と間で、偏光板を通過できる光の量が決まります。




さらに液晶は、その配向状態は電界(電圧)により制御されます。



基本的に電流が流れない方式です。



そのため液晶自体は、低消費電力な表示デバイスと言えます。




ただし、バックライトを光らせる必要があります。



液晶TVでは、バックライトの消費電力が占める割合が高くなります。



従来バックライトは常に全面点灯状態でしたが、近年は、黒の表示領域が多い映像ではローカルデミングと言う方式を用いてバックライトを部分的に消灯する等の工夫をしてコントラスト比の向上や省電力化を実現しています。



従来の冷陰極管を用いたバックライトから、ON/OFFし易く、発光効率が高いLEDバックライトを導入することにより低消費電力化が進められています。



3)OLED-Displayの基礎


有機ELデバイスは自ら発光します。


そのため自発光デバイスと言われます。


これが液晶デバイスとの大きな差異となります。


有機ELは少し説明が難しいのですが、簡単に言えば、非常に薄くした複数の有機材料の層に電流が流れる条件を見出して、その電流によって発光を制御する表示デバイスと言えます。


もう少し、具体的に説明すれば、


有機ELデバイスは、本来は電流が流れない有機材料(絶縁物)を非常に薄い膜にして、異なる有機材料を複数層積層し電極でサンドイッチします。


この時に電子(エレクトロン)の移動しやすい有機材料のA層と負の電極材料との間で電子が移動できる関係の組み合わせを見出します。


正の電極側では、電極材料と有機材料層Bの間でも正孔(ホール)の移動しやすい材料を見出します。Bの有機材料層自体が正孔が移動しやすい材料でもあります。


そして、これらの電子と正孔が出会って発光する有機層(発光層)を、A層とB層の間に形成します。


この発光層にもA層からの電子が入りやすく、またB層からの正孔も入りやすい材料の選択が必要になります。


電極間に電界がかかると、発光層に移動した電子と正孔が、発光条件となる励起状態となるようなエネルギー状態になるように構成します。



ここで電子と正孔が効率的に再結合して発光する形で電流が流れます。



発光に寄与する電流の割合を増やし、熱等に変わって発光に寄与しない電流を極力減らすことが大切な要素となります。



また、有機ELでは電流と明るさの関係が比例関係にあります。



そのため、画面全体で、赤、緑、青の全ての画素を光らせる白バックの映像等では、電力をより消費することになります。



有機ELデバイスは、消費電力が映像内容に依存するということを念頭に置く必要があります。




4)LCD-TV  OLED-TV の基礎まとめ


上記の表示デバイスとしての特徴の他、テレビにした場合の構成上の比較を含めて下表に示します。

液晶vs有機ELテレビ構成比較表



液晶TVの方がバックライトや光学フィルムが必要な分、周辺部材のコストはアップします。


ただし、実際の表示デバイス部の製造コストは、従来に比べて大分改善したとは言え、有機ELにはまだ課題があります。



このため、有機ELテレビはまだ高価な状況です。



有機ELの大型ディスプレイパネルを量産できるメーカーは現在は韓国のLGだけです。



ここでは55インチと65インチの有機ELの蒸着方式による生産が主となります。



主たるテレビメーカーはLGから有機ELパネルを買って、画像エンジン等に特徴を持たせることによって有機ELテレビに仕上げています。



国内では漸くJOLEDが印刷方式による20インチクラスのパネルの量産を開始しました。



今後大判パネルへの展開もしくは技術供与も念頭に置いているようですが、弱体化してしまった国内のディスプレイパネル産業の再生につながることを期待しています。



携帯・スマホ等の小型のOLEDパネルでは、韓国の三星(Samsung)がまともに使えるという意味で世界で最初に量産に成功したメーカーと言えます。



日本国内のディスプレイメーカーは有機ELに手をつけたものの、信頼性を確保することができず、液晶に逃げて、有機EL分野では韓国に大きく差をつけられてしまいました。



新しい技術を極めることが、次に生き残るメーカーの必須条件であるにも関わらず、現存の技術のマイナーチェンジで延命を図ったことにより、日本のディスプレイ産業は衰退に追い込まれてしまいました。


今やコモディティ化してしまった液晶分野においては、日本、台湾、韓国からの技術を導入した中国が巨大な液晶ラインの立ち上げを完了しています。


スマホ等の小型パネルや、大判の液晶パネルの量産が始まっており、液晶ディスプレイパネル産業は中国製品に支配されるのも時間の問題となっています。



これにより液晶TVは、今後さらに低価格な製品展開が予想されます。





2.液晶および有機ELテレビの表示と選択時の留意点



ここでは、液晶TVと有機ELテレビの選択肢として、何を優先したら良いか、と言う観点で記載したいと思います。



ただし、個々人によって優先項目は異なると思います。



そのため、以下の項目についての優劣についてコメントします。



①映像の美しさ(設置環境についても考慮)


②消費電力




これらにについて、以下にまとめます。




①映像の美しさ


近年の液晶ディスプレイの映像に対する品質の改善は目を見張るものがありました。


一言で言えば、液晶テレビは、どこのメーカの製品も綺麗です。


55インチ4K液晶テレビ



特に液晶の弱点であった視野角依存性も、光学フィルムの改善や、液晶の配向制御等により改善されています。



早い動きで輪郭がボケる動画ボケの対策も液晶材料自体の応答速度の改善や、駆動方法の工夫、倍速、4倍速駆動や、バックライト制御等により図られています。



過去のアナログ放送のブラウン管テレビとは比較にならないくらい表示品位は良くなっています。



じゃあ、有機ELテレビは不要??





有機ELはより綺麗! まずは色


液晶テレビの表示品位のレベルも向上していますが、有機ELは映像の観点からも液晶の特製をさらに上回る要素が多くあります。



有機EL自体の赤、緑、青の発光スペクトルは、その半値幅が狭く、高い色純度の発光が得られます。


液晶のバックライト+カラーフィルターで作られる色のスペクトルはブロードとなるので、有機ELの方がより純度の高い色が表現できます。



そして、純度の高い赤、緑、青の発光が得られることから、表現できる色の範囲も広がります。





無限大のコントラスト比 締まった黒 暗い領域での階調表現力


液晶ディスプレイは映像を表示する時は、全面もしくは部分的にバックライトが点灯しています。



この光が液晶の僅かな配向状態の乱れ部分から漏れてしまいます。



そのため、ハイスペックな液晶テレビでは、黒を重視してのコントラスト比の改善が進められてきました。



10万対1、100万対1のコントラスト比を謳う製品も展開されています。




これに対して、有機ELは、、、




先にも説明しましたが、有機ELパネルは自発光デバイスです。




そのため、黒状態では輝度は0となります。



コントラスト比は以下の式となります。



 コントラスト比=白輝度/黒輝度




そのため有機ELではコントラスト比は無限大となります。




そして、有機ELは「締まった黒」が表現できる表示デバイスであると言えます。




さらに、有機ELは、電流に比例して輝度が制御できるため、真の黒レベルから微妙に明るくなる黒、つまり暗いレベルので階調の表現能力が高い表示デバイスと言えます。




液晶は回り込み光等の影響で黒い方の階調を表現するのが苦手なのに対して、有機ELはこの表現力が豊かです。



このため、有機ELテレビであれば、映画コンテンツの暗い場面をテレビで観ても、黒潰れせずに映像を観ることができます。



個人的には、黒の締まり、低階調領域(黒に近い領域、暗い領域)での階調表現力により実現される映像の質感、立体感が、有機ELでもっとも特筆すべき長所と思っています。



これにより得られる映像への臨場感、没入感は、液晶テレビを上回るものと感じています。




視野角も自発光の有機ELが一本!



さらに有機ELテレビは、自発光デバイスであるために、広い視野特性を有しています。



斜め方向から見た映像は、液晶テレビは大分改善しているとは言え、有機ELテレビの映像と比べると見劣りします。



広いリビングで大型テレビを中央だけでなく、左右から観る場合は有機ELテレビの方が適しています。




じゃ、綺麗な映像観たければ、有機ELで決まり!?





白映像、きらりと眩しい映像は液晶



黒、黒の中間調、階調表現では圧倒的に有機ELが有利です。



しかし、前述したように有機ELは各画素に電流が流れることによって映像を表現します。



このため、白背景の明るい映像では大きな電流が流れます。



テレビの電源電流の最大値は決められています。



これが画面全体の輝度が上げられない制限となります。



そのため、特に南極の氷山等の映像や、氷雪の白バックで、お日様にキラリと輝くダイナミックレンジの高い映像イメージを、有機ELテレビでは十分に伝えられないケースもあります。



このような映像に関しては、そのイメージを表現できるのは液晶テレビとなります。




つまり、


暗い場面の映像、夜間や花火の映像、色鮮やかなコントラストの高い色彩豊な映像を見る場合は、有機ELテレビが得意


白や青で明るい場面の多い映像、さらにこの中でキラリと光る映像が多用されている場合は液晶テレビが得意




設置環境も考慮


家電量販店や展示会場で、有機ELテレビと液晶テレビを並べて同一の映像を表示しているケースを良く見かけます。



照明がかなり明るい場所に展示されているケースでは、有機ELテレビよりも明るさが出せる液晶テレビの方が良い印象を受けることがあります。



有機ELテレビは、白の表示領域が広い映像では、輝度が十分に出せないので、外光の干渉に勝てずに、白が黄ばんだ色に見えてだいぶ貧弱な画に見えることがあります。



折角の色の表現力も外光の干渉に負けてしまう程度の表示輝度しか出せないとかなり厳しいと感じました。



有機ELテレビを視聴する場合は、室内照明もしくはそれ以下の照明下で観ることも考慮する必要があります。





②消費電力



最近の液晶テレビと有機ELテレビの消費電力について確認しました。



同一メーカー、4K-TV 55インチ、チューナー内蔵、HDD内蔵無(外付)、動画性能120コマ等の構成条件を揃えて消費電力を比較すると以下となります。



ここでは例としてソニーさんの製品で比較しました。



ほぼ同一仕様の液晶パネルだと50インチ程度で140W~200W未満、65インチで210W程度の製品を同時に確認しています。



ソニーさんの液晶テレビの消費電力は237Wと、他の液晶テレビに比べると少し高目ですが、有機ELテレビ393Wと比較するとかなり低いことがわかります。



大雑把に言うと、有機ELテレビの消費電力は、液晶テレビのほぼ倍になります。


55インチ-4K 液晶テレビ 237W





55インチ-4K 有機ELテレビ 393W




3.液晶テレビを買うなら、有機ELテレビを買うなら



有機ELテレビは、締まった黒と、暗い部分での階調表現の豊さ、色の純度で、現在の液晶テレビの映像の質感や色域を上回る素性を持っています。



有機EL自体も液晶に比べて素子の応答速度1ケタ~3ケタ程度早いので、動画性能も良く、動画ボケ等についても有利なデバイスです。



しかし、消費電力が高いという欠点と、このために、輝度が十分に出せないという制約があります。



有機ELは必要な画素だけ発光するので、消費電力の面では、液晶より有利というコメントを見ることがありますが、現時点ではそれは間違いです。



暗い映像や、花火のような発光領域が少ない映像だけなら確かに有機ELテレビの消費電力は抑えられます。



ただ一般的なテレビの映像は、カラフルで明るいシーンも多く、その中には、消費電力の観点から有機ELの苦手とする白や青色領域の占める割合が多い映像も多くあります。



有機ELでは、赤、緑色では、かなり高効率の材料やデバイス構造の目途が立っていますが、青はまだ先の2色程の効率が得られていません。



色(映像)を作るうえでは、青は重要な要素なので、これにより緑や赤のメリットも頭打ちになっているのが現状です。



これに対して液晶テレビのバックライトは、効率の高いLED光源となり、光の有効利用を改善する光学フィルムや導光板、そして全面あるいは部分的な点灯制御の仕組み等で、いたる所で省電力化が考慮されています。


全黒表示時等では、コマ目にバックライトを消灯する等により省電力化が考慮されています。



このため、液晶テレビに対して、有機ELテレビの方が消費電力的に有利と言い切るのはまだ時期尚早です。



実際に先に貼りつけた写真の製品スペックで消費電力の欄を見直していただければ理解いただけると思います。



現時点では液晶テレビの方が消費電力的には有利です。




電気代より、とにかく映像美を優先したいという方には有機ELテレビを強く推薦します




画面輝度は液晶テレビほど出せないので、周辺が明るい環境での視聴には適しませんが、一般家庭の室内の使用であれば大きな問題ではないと思います。




有機ELテレビの映像の色や質感は感動的です。十分に堪能いただけると思います。




将来的にはさらに高い発光効率のEL材料、デバイス構造が開発され、低消費電力化も図られると考えられます。



パネルの製造歩留りもさらに向上して価格もさらに安価になるはずです。



現実的な価格面を考慮すれば、当面は液晶テレビで、もう少し先に有機ELを考えるのも一つの手段だと思います。



個人的には有機ELの映像の方が断然好みですが、毎日のテレビの長時間使用を考えると、電気代も無視する訳にはいきません。


今の液晶テレビは、すでにバランスのとれたレベルの高い表示媒体であることには変わりないので、、、、


次か、その次の買い替え時には有機ELテレビにしたい希望があります。



今後、液晶や有機ELの原理等の説明を図等を加えてわかりやすくした内容を、本ブログに追加もしくは別ブログ等で紹介していきたいと思います。





最後まで読んでいただき、ありがとうございました!





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